弱視(じゃくし)って何?

弱視とは?


文字のとおり視力が弱いという意味ではありますが、一般的に言われる「学校視力に満たない」という認識とは異なります。医学的には視力の発達が障害されておきた低視力の事を言います。

子供の眼科健診

もっと具体的にわかりやすく言えば裸眼の視力ではなく、何らかの要因がありメガネやコンタクトレンズを使用しても生活必要上の矯正視力が出ない状態である事を指します。

例えば

A君)裸眼視力 0.1 → 矯正視力1.0 ※弱視ではない

B君)裸眼視力 0.1 → 矯正視力0.2 ※弱視判定の可能性あり

ともに裸眼視力は0.1ですが、A君はメガネやコンタクトレンズをすれば矯正視力が1.5まで出る。そのため弱視とは判定されません。

しかしB君はメガネやコンタクトレンズで矯正しても0.2までしか視力が出ません。こうなると、何らかの要因があり単純な近視や遠視ではないという判定となり、できる限りの治療を行っても結果が変わらなければ弱視という判定になり得ます。

弱視になる原因


では、弱視になってしまう「何らかの要因」とはどのようなものなのでしょうか。複数挙げられますが、ここでは代表的なものを挙げてみます。

(1)遠視・不同視などの屈折異常

特に遠視は近くにも遠くにもピントが合いにくい目の異常です。不同視は左右の目の見え方が全く違う(医学的には2ジオプター以上の度数さがある)異常です。

子供だと目を細めて見たりするような仕草や物事に飽きっぽく落ち着きがない様子が見られますので、日常生活を通してのサインを逃さないようにします。

乳幼児健診で発覚したら、目に合った眼鏡を使用したり目薬による治療を行います。

(2)斜視

片眼の目が、物を見る為に最も大事な部分「中心窩」で物を見ていないため視力が発達しない異常です。

肉眼で見たときにわからない程度の斜視もあります。その場合、片目は見えているので発見が遅れる事も多くあります。注意が必要です。

(3)形態覚遮断

耳慣れない言葉ですが、先天性の白内障、目の腫瘍、角膜混濁(にごり)、眼瞼下垂など、生まれつき大きな病気をもっていて目の成長期に与えられるべき刺激が遮断されてしまっている事を指します。

治療としてはこれらの病気に対する適切な手術等を行い、弱視になる要因を除去します。

ただし、家庭で安易にできる眼帯による片眼遮蔽もこの原因の1つにあたります。乳幼児への眼帯は、眼科医からの指示が出たときだけと限定しましょう。メヤニが出るから、腫れているからと安易に視力の発達時期に眼帯をしてしまうと大変な事態になりかねません。

小学生になる前までに


人間の目(眼球)は身長や体重とは異なり、大抵は6歳ごろまでには大人と同じ程度に成長します。

この時までに、上述したような弱視になる要因を取り除き正常な視力が発達していないと、一生ぼんやりとした世界で生活する事になりかねません。

乳幼児健診をしっかりと受け、快適な視力で小学校に入学させてあげたいものです。物が見えにくい状態だと、勉強をしていてもお友達と遊んでいても楽しくないですものね。

眼科でマックスとお伝え下さい【ワンデーアキュビューシリーズの最高峰】

「眼科でマックスとお伝え下さい」のレンズって何?


現在テレビCMにて、キャッチーなフレーズをよく耳にします。

「眼科でマックスとお伝え下さい」

これって何?と思われている方も多いかと思います。

これはワンデーアキュビューシリーズの最高峰としても過言ではない1dayタイプのコンタクトレンズの事を言っています。

コンタクトレンズユーザーであれば「アキュビュー」という銘柄は少なからず耳にされているのではないでしょうか。このシリーズの最高傑作といってもよい商品が出たよ!というCMなのですね。これがワンデーアキュビューオアシスマックスという商品なのです。

ワンデーアキュビューオアシスマックス


ジョンソン&ジョンソン社が製造するこのアキュビューシリーズは、日本においてシェアナンバーワンを獲得してきた製品です。

1995年の発売以来
ワンデーアキュビュー→

ワンデーアキュビューモイスト→

ワンデーアキュビュートゥルーアイ→

ワンデーアキュビューオアシス

という具合に、更に乾燥しにくく酸素透過性をUPし目の疲れを軽減するといったデザインにここ30年近くでどんどん進化しているのです。

そして2024年、ついにワンデーアキュビューシリーズの最高峰とも言える「ワンデーアキュビューオアシスマックス」が登場しました。

1dayアキュビューオアシスマックス

ワンデーアキュビューオアシスマックスの凄いところ。


では、どれだけの改良がなされたのか2点程ご紹介します。

1つめは「涙を安定させ、なめらかな着け心地が続く」という点。

コンタクトレンズを目に入れると、涙液層が一定に保たれずにドライアイの症状を引き起こすことがよくあります。しかし、ワンデーアキュビューオアシスマックスは保湿成分がコンタクトレンズに最適に分布するよう作られており、瞬きの度に起こる摩擦を軽減。レンズの滑らかさが1日続くという独自の技術を用いて作られています。

2つ目は「HEVフィルター」により短波長光をカットする点。

UVカットは紫外線カット効果とイメージがわきやすいと思いますが、HEVというのはその紫外線の次に強い光「High Energy Visible light」の略でざっくり言えば「青色光(ブルーライト)」に対するカット効果がありますよという事です。ブルーライトは空気中で散乱するため、ブレた感じに見えたり疲れやすくなる事があります。この症状を緩和しますよという機能です。

※余談ですが、一般的に認知されているデジタル機器(パソコンやスマホ等)から発せられる「ブルーライト」は、眼球に大きな害を及ぼす程度には発せられてはいないと米国眼科アカデミー及び日本眼科学会のホームページ上等でも周知されていますので、ブルーライトカット効果と呼ぶのには少し語弊があるかもしれません。

その他、裸眼時と比べても98%という高い酸素透過性やUVカット効果はもちろん、裏表のマーキングなどアキュビューシリーズが継承してきた良いところはそのまま標準装備とされています。

ワンデーアキュビューオアシスマックスのちょっと残念なとこ。


では、こんなに良いとこづくしで非の打ちどころが現状なさそうな製品の処方希望者が何故少ないのか??というところに行きつきます。

こんな良い製品ならぜひ試したい!と今までのアキュビューシリーズの新商品が少なくとも発売されたときはそうでした。

これは一重にA子の独断推測ではありますが「お値段」なのではないでしょうか。

昨今の原料や輸送費の高騰により、様々な物価が上昇しています。ネットショッピング等で検索しても、両眼で1ヶ月あたり1万が相場のようです。月額でこの額では、やはりユーザー側としてはかなりの負担ですよね。

それなら目とお財布に負担がない程度の他社の商品を選択されるという事も、致し方のない事なのでしょう。もちろん、眼科では目に異常をきたさない範囲の処方であれば何の問題もありません。どこに価値を見出すのかは十人十色なのでしょう。

コンタクトレンズが軒並み欠品している理由は???

主要メーカー大多数でコンタクトレンズが欠品中


コンタクトレンズは生活必需品のひとつであり、日本はアメリカに次ぐ世界第2位のコンタクトレンズ大国です。

国産品レンズももちろん存在はしていますが、大多数が輸入に頼っているのが現状です。

コンタクトレンズとケース

現在の欠品理由としては、

1)ロシアとウクライナの戦争

2)新型コロナによる行動制限の緩和

3)半導体の不足

という事が大きな原因として挙げられています。
もう数年にわたってこの状況が続いてしまっていて、いつ頃解消になるのかという見通しがまだ立たないのが現状のようです。

原因1:ロシアとウクライナの戦争?


ロシアとウクライナの戦争の理由に関しては、もう2年も経過しました。ロシアとウクライナが戦争をする事により、他国で製造されているコンタクトレンズがロシア上空を通り輸送されてきたルートを迂回する必要性が生じました。そのため、輸送日数やコストが大幅にかかる事になりました。

日本でのシェア率が高いジョンソンエンドジョンソン社のアキュビュー製品はアイルランド工場で製造されています。以前までのルートをかなり変更して輸送しなければならなくなった為に、レンズの納品に大きく影響が生じ、また市場価格も大幅に昨年の時点で値上がりしています。さらに条件付きで送料無料であった日本国内での配送費も1箱でも24箱でも一律550円のユーザー負担に変更となっています。

原因2:新型コロナによる行動制限の緩和


数年続いたコロナ禍においてコンタクトレンズの需要と供給のバランスが崩れてしまった事です。行動規制が緩和されてから数年経過しましたが、まだまだ続きそうです。

コロナの行動制限で在宅ワークが主体とされたこともあり、レンズの需要率が当時は一気に下がりました。その後、製造工場における稼働率も低下していたところに、行動制限が解除された事が要因で一気にコンタクトレンズの需要が高まり供給が追い付かないという事態に陥りました。

国産品であるシード社のワンデーピュアシリーズの供給がなかなか追いつかないというのもこの辺りに原因がありそうです。また、これらの製品は他社商品が欠品しているので「間に合わせに使用するため」という事でもオーダーが増え製造ラインがパンクしてしまっているのは重なっていそうです。

原因3:半導体の不足


この理由もかなり長期的かつ世界的な問題です。コンタクトレンズ工場の製造ラインのメンテナンスで発覚した不具合等が修復できない状態です。直しなくても、壊れた部品やらが調達できないという切実な問題です。

10台あった製造ラインの稼働が半分になれば、単純計算で通常時であったとしても必要コンタクトの半分しか作れない事になります。

利用中のコンタクトレンズは早めにオーダーを!


以上のような理由が主で、コンタクトレンズ大手メーカーは各社欠品情報を日々発信せねばならぬ現状となっています。

ご自身の使用している銘柄やデータが対象なのかを早めにお求めになる販売店で確認し、視力矯正が確実にできる様ユーザー自身も注意しておかなければなりません。コンタクトレンズは目の中に直接入れて使用するため、度数が同じでも合う合わないが生じますからご注意を!

それから、目に合った「メガネ」もちゃんと携帯しておくことをお忘れなく。

コンタクトレンズの「度数だけ測って欲しい」という謎。

コンタクトレンズの度数だけ測るってどういう事?


眼科で働いていると常識、でも一般的にはあまり知られていない事ってよくあります。

例えば、

★緑を見ると目が良くなる。
⇒これは緑という色ではなく、遠くを見る事の方が重要なのです。昔は遠くを見ると緑の木々や山々があったため、”緑”と要約されてたのではないかと言われています。遠くを見ているときの方が(近くの時より)ピント調節に負荷がかかりにくくなると言いたかったのでしょう。

★暗いところで漫画を読むと目が悪くなる。
⇒これは暗さではなく、漫画を見る距離が重要なのです。漫画本に顔を近づけて見ると、近視が進む原因になります。

★メガネにすると、目がどんどん悪くなる。
⇒これもウソ。メガネを掛けたから目が悪くなったのではなく、目が悪くなったからメガネを掛けたので、時系列が逆です。メガネを掛けた事が直接の原因となり近視が進行する事はありません。

このような迷信らしき事をよく耳にします。

そして、最近増えたのが「コンタクトレンズの度数だけ測って欲しい」と言われる事です。

一見、何がおかしいの?と疑問を持たれる方も多いかと思います。

しかし、実際にコンタクトレンズを処方する眼科側からみると、「え?度数だけ、どうやって測るの?」という疑問符が飛び交います。

何故そうなるかというと、コンタクトレンズの度数は最後に導き出された結果値であるからです。

コンタクトレンズの度数はどうやって決まるの?


酸素透過コンタクトレンズイメージ

では実際にコンタクトレンズを作るときに、何が行われるのかを考えてみます。

まずは診察により、一般的な目の異常がないかや矯正視力が問題なく出ているか等を確認します。

その後です。

(1)実際に目の中に入れる製品を決定します。用途や目のデータを元に相談します。

(2)(1)で選んだ実物を装着し、目とのフィット具合をチェックします。(ここでテスト用に選択する度数は仮のものです。)

(3)(2)で問題がなければ、初めてここで度数をどうするかを微調整していきます。テストレンズの度数を元に希望の見え方を確認し、頂点間補正、等価球面など耳慣れない事が勘案されて初めてそのコンタクトレンズでの度数が決定となります。

上述したのは一般的な球面のみのレンズ矯正におけるもので、乱視用や遠近両用等その他特殊レンズに至っては、さらに工程が増えて最終的に度数が導き出されます。

コンタクトレンズには「度数」だけではなく、カーブ・サイズ・厚みなどをはじめとして様々なデータが存在します。それらが実際にヒトの目の中、涙に浮かんだ状態でどのように作用するのかで度数は決定されます。

そのため、いきなり(3)の工程にスキップして結果値だけを出すというのは理論上無理という話なのです。

度数だけで決定すると、目のトラブルが起こる原因に!


以前、こんな事がありました。

当院で発行したコンタクトレンズ処方箋を元にネットで商品を購入した患者様。採用されたのは”度数のみ”。商品名もカーブもサイズも全く違うものをオーダー。しかも、安いからといって親御様が購入してお子様に使用させたそうです。数日後、目を真っ赤にして痛みを訴えたお子様が来院したときには、目が傷だらけになった悲惨な状態でした。

他にも、カーブ・サイズ・度数に至ってもデータ表記が全く同じである2つの商品。商品名を無視して、データだけを同じで値でネットで入力して購入し、角膜炎を起こしたケースもあります。理由はコンタクトレンズの含水率にありました。治癒後は高含水タイプのレンズに変更する事が医師から指示されました。

他にも乱視用や遠近両用の場合では、商品を変えたら全く見え方が変わっておかしくなった。持ち込み乱視の発生などで大変な思いを味わった患者様も多数いるのは事実なのです。

今回は知らない、聞いたこともないような言葉が沢山でてきました。自分は大丈夫と安易に度数だけを考えてコンタクトレンズを使用するのは絶対に止めましょう。

正しく使えば大変便利なものである事には間違いないのですから、「度数だけ」に着目するのは大変危険な事なのです。

健康保険の適応範囲について

国民皆保険制度とは


日本には国民皆保険制度という、他国には無い医療制度があります。簡単に言えば、日本国民であればいずれかの健康保険団体に加入しているのが当たり前で、健康保険証がその証です。

日本国憲法第二十五条に(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」 (2)「国は、すべて の生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」 と、規定がありますとおりの制度です。

クリニック

そもそもこの国民皆保険制度は、一定の保険料を保険者に納める事により、突然病気やケガをしたときに病院へ支払う医療費の自己負担が軽減されるものです。お金がないから医療を受けられないという理由で、国民の健康が損なわれないようにするのが本来の目的です。この制度により世界最高レベルの平均寿命や医療水準を実現しているのは確かです。

また、保険医療費は国が適切に料金を定める事により、どの医療機関であっても同等の金額(病院やクリニック等で多少の差はあります)で適正な医療を受ける事ができます。

価格を自由に設定させないのは、医療における値下げ競争への牽制もあります。また、今問題になっているオーバードーズ(薬の飲みすぎ)を防ぐ意味もあります。

適正な保険診療について


ここでは「適正な医療」という事に注目してみます。例えば、次のようなご要望が患者様からあった場合、どのように考えますか?

「すぐに薬を使いきってしまうから、30本目薬を下さい。」

希望通り、一度に30本も目薬を渡して良いものでしょうか??

→保険診療の観点から考えますと、目薬であっても薬には変わりありません。適量の投与が保険診療として認められます。出す量が多すぎたり、必要以上に使ってしまっている事も多々見受けられます。いくら多く点眼しても、吸収量というのは限られておりほとんどは瞼からこぼれ落ちてしまっているような状況もしばしば耳にします。

そのため、患者様が欲しい分だけ薬がもらえる訳ではないのです。医師が診察して、治療に必要とする量を処方するので受け取れるものです。

もちろん、年末年始やらで病院自体がお休みになるのでいつもの薬を多めに医師が出すという事はあります。ですが、欲しい分だけもらえるという事ではありませんよね。

では、次はいかがでしょうか。

「コンタクトレンズの処方箋、10種類試したいから出して下さい」

ご自身の目に合う製品を探したいのはわかりますが、保険診療の範囲内でしょうか??

→10種類も一度にコンタクトを目に入れる事はできません。通常の範囲であれば、2WEEKと1DAYを用途によって使い分けるとか、ハードレンズと1DAYなら何とか理解できます。せいぜい2つまでが限度でしょう。

コンタクトレンズも高度管理医療機器に位置付けられるもので、使い方を誤ると人体に大きな異常を引き起こします。やはり薬に準ずるものとして取り扱い、必要以上の分量を処方箋にお書きする事はできません。コンビニで違う味のジュースを何本も買うのとは訳が違います。

続いてはこんなパターンです。

医師から4ヶ月毎に検査をしましょうという指示を出しているにも関わらず、患者様ご本人が

「検査は年に1回で良いんです」

→これは検査が疲れるからとか、医療費の負担が増えるからとか様々理由があるように見受けられますが、4ヶ月毎というのは医師が病状により診断していくために必要と判定して指示をしています。これに従わずとして、何をどのように管理して診察や投薬が行えましょうか。眼科に来て視力も測らせてもらえない事も実際問題としてあります。

医療費の負担については、保険医療機関において不必要・過剰と認められる検査が行われている場合、診療報酬請求書に基づき減額されるチェックシステムとなっています。

うっかり紛失してしまっても、保険適応外です


では、次のような時はいかがでしょうか。

「昨日、診察を受けて薬もらったけどなくしてしまった。もう一回もらえますか?」

不可抗力かもしれませんが、うっかりもらったばかりの薬を丸ごと落としてしまった。どこかに忘れてきてしまった。こんなご経験がある方もいらっしゃると思います。しかしながら、必要分以上の診察や調剤は健康保険の適応外です。

もちろん無くしたからといって、調剤してもらえない訳ではありません。本当に無くしているのに必要な薬がないと大変な事になってしまいます。薬はもらえます。ただ、その料金の支払いが全額自己負担になるという事です。健康保険内においての診療(保険料の支給)は完了しているため重複される事はありません。

本当にうっかりやってしまった方はやりきれない判定かと思いますが、持っているのに無くしたと偽って受け取られる事を防ぐ(または転売などを防ぐ)ため、たとえどのような事情でも保険診療外となります。健康保険には紛失保証はついていません。

 

いかがでしたでしょうか。適正範囲という解釈には個人差が生じ疑義がつくも事も多くありますが、常識の範囲内で考える事が大切に思えます。

角膜血管新生に気づけますか?

角膜血管新生(かくまくけっかんしんせい)とは


読んで字のごとく、角膜(黒目)に新しい血管ができてしまう病気です。角膜が酸素不足の状態になっていると、角膜に酸素を運ぼうとして目の中で血管が作られてしまいます。

症状が悪化した際、最終的には失明にまで至るとても怖い目の病気です。

更に怖いのが、よほど酷くなるまで「自覚症状がない」ということです。痛くもかゆくもなければ眼科に行こうなんて思わないですよね。初期の段階において肉眼で確認するのは難しいです。

角膜血管新生↑の写真のように酷くなると白目の部分から、黒目の部分に向かってどんどん赤い血管が酸素や栄養素を運ぶために伸びているのがわかります。

原因が角膜の酸素不足にあるので、

コンタクトレンズを

うっかりつけたまま寝てしまう。

酸素透過性の低いレンズを毎日長時間に渡り使用している。

無理な使用方法で使ってしまっている。

という方に発症しやすい病気です。

角膜血管新生と診断されたら?


ともかく、すぐにコンタクトレンズの装着をやめる事。

これが何よりの治療です。

程度にもよりますが、黒目にできてしまった血管が元の状態に戻るには、早くて数ヶ月から大抵は年単位で時間がかかります。新生血管ができているのに、気にせずコンタクトレンズを使っているとやがては視力低下が始まり最終的には放置した場合は失明にまで達します。

それから角膜血管新生を作ってしまう人にアルアルなのですが、

「メガネを持っていない」

と申し出られる事がよくあります。

メガネは顔の印象が変わるから嫌とか、仕事上どうしてもメガネでは無理だとか様々な理由はあると思います。

しかし、

「失明」VS「メガネを掛ける」

どちらを選択されますか?

答えは1つではないでしょうか。

コンタクトレンズをやめる事によって角膜に酸素が補給されることで、血管が徐々に消えて症状が改善されていきます。

確かに近年は酸素透過性の高いコンタクトレンズが出てきていますが、メガネに優るものではありません。初期の段階であればコンタクトレンズの使用は必要最低限にとどめる等で改善されるケースもあります。眼科医からの指示を仰ぎましょう。

酸素透過性が高いものでも使い方次第


近年は酸素透過性の高いコンタクトレンズが登場はしてきていますが、

★使用期限を超過して使っている

★汚れがついたまま

★レンズが変形している

★カラコンが希望

等の理由で、酸素透過性を低下させてしまっている事もあります。これらの点においてはやはりどんなに良い素材、製品であっても使うユーザー次第というところです。

角膜血管新生になっているかどうかは、眼科で医師に診てもらえばすぐにわかります。

定期的な検診を受ける事の大切さがここにも存在しています。

暗いところで見えにくいのは病気?

夜盲症(やもうしょう)って何?


暗いところで見えにくい。

このような症状は誰でも経験はあると思われます。

一般的には、

「暗いところではそんなもんでしょ。」

「老眼が始まったかな。」

なんて事で片づけられることも多いですが、もちろんそうではない場合もあります。

暗い部屋

人間の目の機能で、

まぶしさに目が慣れる事を「明順応(めいじゅんのう)」

暗さに目が慣れる事を「暗順応(あんじゅんのう)」

といいます。

 

具体的には、夜に暗い部屋の電気をつけると一瞬眩しく感じますが直ぐに目が慣れます。これは明順応です。

反対に、明るい部屋の電気を消すと真っ暗で何も見えなくなりますが、時間が経つと目が暗さに慣れてきます。これが暗順応です。

明順応より暗順応には時間がかかります。

ただ、時間がたっても暗さに慣れてこない。

すなわち暗順応の機能がうまく働かない病気があります。

 

これを夜盲症(やもうしょう)と言います。

暗順応のしくみ


光は角膜(目の入り口)から入り、網膜(光を感知するスクリーン)に到達します。

この網膜には光を感知する

「錐体(すいたい)細胞」

「杆体(かんたい)細胞」

2つの細胞があります。

錐体細胞は主に明るいところでの働きが顕著で、色を認識したりするのもこの細胞の役目です。暗いところでは動きが低下します。

対して杆体細胞は色の認識はできませんが、わずかな光でも感知する機能に長けるため暗いところで動きます。

夜盲症だと杆体細胞がうまく機能しないので、

暗いところで見えにくいという症状が起こります。

進行する夜盲症


暗い所で見えにくい。

これが夜盲症の代表的な症状です。

ところが、錐体細胞は正常に機能しているため明るいところでの見え方は至って普通という事もあります。

そのため、何か異常があると本人が自ら気が付くのはなかなか難しいものでもあります。

夜盲症には

先天性(生まれつき)と後天性(栄養不足や炎症などが原因)があります。

 

とくに先天性の場合は生まれつき杆体細胞が働かない。

生まれた時からずっと、暗いところは見えにく状態。この見え方が普通だと思って生きてきている訳です。

ましてや子供が「見え方が変だよ」

と、自分で上手に説明する事は難しいでしょう。

 

夜盲症なのかな?

 

と気づくきっかけは

暗い部屋で物によくぶつかったり、つまづく。

たまたま友達や家族との見え方の差が話題にあがった。

 

このような時が多いようです。

先天性の場合、夜盲症の症状が

「進行するタイプ」と「進行しないタイプ」に分けられます。

進行するタイプの夜盲症のうち代表的なのは、難病に指定されている網膜色素変性が原因となるケースです。

網膜色素変性は大人になる頃までには症状が発症し、数十年かけて進行していきます。

夜盲症以外にも

視野狭窄

視力低下

といった症状が見受けられます。

進行性の夜盲症としては、ほかにも脳や網膜の疾患があります。

進行しないタイプであれば

視野や視力は正常であることが多く、暗い所以外では普通の生活が送れます。

いずれも遺伝が大きく関係していると言われています。

後天性夜盲症の場合


後天性の場合、夜盲症の症状が突然現れます。

後天性夜盲症の原因として真っ先に挙げられるのは、

 

ビタミンA欠乏症。

 

他にも「網脈絡膜炎」「眼球鉄錆症」などが原因とされています。

夜盲症の診断


自覚症状だけを元に診断する事はできませんので、眼科では主に次のような検査を行い夜盲症かどうかを他覚的に診ていきます。

●眼底検査

医師が肉眼で目の奥にある血管や網膜、視神経などの状態を確認します。

網膜色素変性は、網膜に色素のむらや沈着が見られるのが特徴です。ただし、初期の場合や軽症例では色素沈着がみられない場合もあります。

●視野検査

見え方の範囲を調べる検査です。網膜色素変性や後天性夜盲症の場合は、視野が狭くなっていることがあります。

●光干渉断層計(OCT)

医師が肉眼で正面から眼底を観察するのに対し、横から網膜の断面を調べる検査です。網膜色素変性では、網膜の一部が消失している事が発見される事もあります。

●眼底自発蛍光(FAF)

網膜にあるリポフスチンという物質が蛍光を発する性質を利用して眼底を調べる検査です。網膜色素変性では、病気の進行につれて網膜から発せられる蛍光の強さが変化します。

 

夜盲症の治療はあるの?


医学が発達してきたとは言われていますが、残念ながらまだ先天性夜盲症に対する治療法は見つかっていません。

網膜に光が当たると進行すると考えられていますので、まぶしさの原因になる主に短波を遮光メガネで軽減する等、光の刺激から網膜を守るような予防を行うことで症状を緩和します。

後天性夜盲症の場合は原因となっている病気の治療をします。

ビタミンA欠乏症なら、ビタミンAを摂取する等です。

 

もちろん暗い場所に限ったことではありませんが、見えにくさを感じたら、できるだけ早く眼科を受診するようにしましょう。

J&J「ワンデーアキュビュートゥルーアイ」取り扱いがまもなく終了します

製造終了の一部データについて


ジョンソンエンドジョンソン社より発売されていたワンデーアキュビュートゥルーアイ。使用中の方も多い製品かとは思いますが、すでにメーカー公式ホームページでアナウンスされている通り、一部データの製造販売が終了となります。

ワンデーアキュビュートゥルーアイパッケージ30枚入り

◆ワンデーアキュビュートゥルーアイ一部データ終了について

当院ではギリギリまで処方は行いますが、多くの販売店において取り扱い終了との告知がなされています。度数によってはなくなり次第終了になる可能性もありますので、購入予定の販売店取り扱い状況を確認いただくようお願い致します。

終了度数>>当院における処方は2024年5月末ごろを目途としています。
B.C 9.0㎜ ** 度数 -5.25 ~ -12.00 及び +0.50 ~ +5.00
B.C 8.5㎜ ** 度数 -5.25 ~ -12.00

また、今回製造終了とはならないデータについても今後は製造量が縮小されるため、小売店での販売価格も高騰するのではないかと言われています。

ワンデーアキュビュートゥルーアイがなくなったら、何を使えば良い?


ジョンソンエンドジョンソン社より代替品として「ワンデーアキュビューオアシス」が推奨されています。

いわばワンデーアキュビュートゥルーアイのワンランク上に位置付けられる製品です。コンタクトレンズとまぶたの摩擦を少なくすることにより、着け心地や目の疲れまで軽減してくれるというハイスペックな製品となっています。

ワンデーアキュビューオアシスパッケージ30枚入り価格的にもワンデーアキュビュートゥルーアイよりやや高く設定されている販売店が多いようですが、目にとってはストレスなく使えるので眼科としても後継品として非常に優れている製品かと思われます。

ちなみに、駆け込みでワンデーアキュビュートゥルーアイを買い込んでおくというのも一つの手だとは思いますが、万が一度数が変わってしまったりすると、返品交換保証の対象外となる可能性が高いですから、その点はよく考えて購入なさる事をお勧めします。

アキュビューシリーズは公式サイトからの定期便がおすすめ


昨今の運送費等の値上がりにより、送料無料で自宅に届けてくれるサービスが中止される中、アキュビュー公式オンラインストアなら定期的に割引価格、送料無料でお届けしてくれるサービスがあります。眼科で定期検診を受けた方に限定で、アキュビュー定期便コードが発行されます。

継続するほど割引率がUPします。ご希望の方はスタッフまでお申し付け下さい。

公式サイト>>https://acuvuevision.jp/services/teikibin_tsudobin

マイナ保険証って使っていますか?

マイナ保険証の利用率ってどのくらい?


当院ではすでにマイナ保険証の確認端末を導入しています。マイナンバーカードを保険証と連携して使用することが可能です。暗証番号でも、顔認証でもできるような機械を設置しています。

しかしながら、利用されている方って本当に少ないというのが日々実務を行っている者の感じているところであります。

マイナ保険証

そもそものマイナンバーカードの普及率については、現在人口の7割程度になったとされています。では、マイナ保険証の利用率というのはどの程度なのでしょうか。この点について厚生労働省が2024年2月6日付で発表しています。(以下、わかりやすい日経新聞の記事をそのまま紹介します)

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健康保険証をマイナンバーカードと一体にした「マイナ保険証」について、国家公務員の利用率が2023年11月時点で4.36%だったと発表した。武見敬三厚労相は同日の閣議後の記者会見で「率先して使っていただくよう働きかける必要性を改めて認識した」と述べた。

厚労省が国家公務員の利用率を公表したのは初めて。同省だけ見ると4.88%だった。

政府は23年12月に現行の健康保険証を24年12月2日に原則として廃止することを決めた。全国のマイナ保険証の利用率は23年12月時点で4.29%で、8カ月連続で低下している。

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マイナ保険証は何故普及されないのでしょう?


利用率4%台では、”利用率は低い”と判定されるべき数値かと思われます。

マイナ保険証が普及されない理由として、デジタル庁の発表においては「情報流出が怖いから」(35.2%)「申請方法が面倒だから」(31.4%)、「カードにメリットを感じないから」(31.3%)が3大理由として挙げられています。

相次ぐ人的な登録ミスにより、個人情報の保護の観点から「マイナ保険証は信頼できない」という認識が強まっているように感じます。国家公務員の皆さまですら、利用率4.88%というのは多大な税金を費やし推進されてきた方々が叩き出す数値なのか些か疑問なところです。

他にも、実際に運用は始まっているのに事務的な処理の遅さが非常に目立ちます。

具体的に申し上げると、転職なさった時など、マイナ保険証に新しいデータが反映されるまでに非常に時間がかかっています。そのため、マイナ保険証を使用するにもすでに資格喪失した保険証のデータが残っていて医療現場も患者様自身も迷惑を被る事があります。

例えば、

1/31 前職退職
2/1 新職場に就職
2/8 医療機関受診。新しい会社で手続き中のため保険証がなく、マイナ保険証利用。マイナ保険証のデータに新職場のものが反映されていない。⇒自費負担となる

わざわざ、健康保険資格証明書という用紙を持参された方も保険者の認印がないためマイナ保険証でデータを確認させていただくと、ほぼデータが反映されている事がないのが現状です。また、健康保険資格証明書は保険者の認印(会社の印鑑ではありません)があって初めて効力を発揮します。持参される際はご注意願います。

また、マイナ保険証の操作で顔認証したりするのも足が悪い方だと大変なのです。機械画面にお顔がうまくうつらない(設置台に届かない)とか、暗証番号を忘れてしまったとかいろいろ。クリニック側もスペースの関係で設置場所がカウンターだけでは十分に活用できないという現状もあります。

現行の保険証はいつまで使える?


現在の健康保険証は2024年12月2日に発行停止と閣議決定されています。この日以降は健康保険証の新規発行をやめ、マイナンバーカードと健康保険証が一体の「マイナ保険証」へ移行される事となります。転職をしたり、保険証の有効期限が切れて新しいものへ更新する際、従来のような保険証は発行されないという事になります。

現状を鑑みますと、あと10ヶ月でマイナ保険証への移行が本当にスムーズに行われるか疑問が残るところです。保険証のかわりに資格証明書を発行するとかも言われていますが、それなら従来の健康保険証を発行したほうが手っ取り早いのではないかとも思われます。

とりわけ新規の発行が停止となるので、現行の保険証がいつどのように回収されるかによって対応が変わる事と予想されます。

マイナ保険証のメリットは?


現時点においては、非常にデメリットの項目が多く目についてしまいますがメリットはないのでしょうか?いくつか思い当たる点を挙げてみます。

●医療機関での受付時間の短縮と医療費削減
データが受付と同時に確認登録できるので、受付職員のカルテ手入力が等が省けます。初診時には数十円ですが、患者様の医療費ご負担金が減ります。

●受診の本人確認ができる
友達や兄弟の保険証で受診される事が防止できます。無駄な医療費の削減に繋がります。

●健康診断や薬剤履歴が確認できる
薬剤の禁忌や重複処方を未然に防ぐことができます。

いかがでしょうか。デメリットを払拭するだけのパワーがありますでしょうか。利用するか否かは個人的な判断になるかとは思いますが、根本的な個人情報漏洩問題のあたりを何とかしない限りマイナ保険証の利用率というのは改善されないのではないでしょうか。

緑内障になったらどんな生活になるの?

緑内障と診断されたら、今後の生活はどう変わるの?


「緑内障です」と医師から告げられたとき、個人差はありますが大変な病気にかかってしまったと感じた方が多いのではないでしょうか。

緑内障は、放置してしまえば失明にまで至る怖い病気です。

残念な事ではありますが、現実から目を背けずに向かい合う事が先ずは大切です。むしろ、早期に見つかったのであれば、今見つかったのが不幸中の幸いだとポジティブに考えてみると、少し心が軽くなるはずです。前向きに病気と向かい合って生活する事が大事です。

緑内障と診断されたからと言って「即入院」「即手術」という訳でもありません。急性的な発作や症状がない限り、基本的にはほとんどの方はいままで通りの生活が可能です。

しかし、いくつか気をつけなければならない事があります。多少の制限が必要となる事はご留意いただきたい点です。

緑内障診断後に注意しなければならない事


普通に歩いたり、ごはんを食べたり、遊んだりとほとんどの日常生活は送れますが、いくつか気を付けなければならない事があります。

●緑内障目薬の点眼を忘れない事
●うつ伏せや逆立ちの状態にならない事

最も注意しなければならないのは「眼圧値」です処方される緑内障用の目薬は眼圧をコントロールするためのものです。眼科医の指示通りずっと点眼を継続する事になります。(生きている間はずっと)

眼圧値を上昇させてしまう原因になる「うつ伏せ」「逆立ち」の状態もかなり注意が必要です。

寝るときはなるべく仰向けで寝ます。しかし、寝返りをうったりするのはなかなか防ぎようがありません。リクライニングベッド30°程度の傾斜が眼圧が上がりにくいベスト角度と言われますが、30°のままは一晩寝るのも姿勢としてはあまり現実的ではありません。どうしてもうつ伏せになってしまう場合は、抱き枕などでせめて横向きになることで対処します。

また、エステや整体での施術はうつ伏せの状態は避けるようにします。逆立ちはあえてトレーニングでもしなければですが、うっかり遊園地のジェットコースターで一回転とかは気を付ける必要があります。

眼圧値を上げてしまう原因になりやすい事をもういくつか挙げてみます。

●目を強く押す(かゆい時などにこする)
●ネクタイ、ハイネック等の首をきつく締める服装
●重たい物を持ち上げる(力むような行為)
●長時間のスマホや読書など、頭を下げている事
●激しすぎる運動やトレーニング
●万病の元、たばこ

などがあります。

これは大丈夫かな?という事は、なるべく主治医に相談してから行うようにします。

食べてはいけないものはあるか?


結論から言えば、適度ならほとんどのものは問題はないのです。よく指摘されるものでいえば、

●お酒
●脂っこいもの
●甘いもの
●塩分の多すぎるもの
●その他カロリーの高いもの

すべてにおいて気を付けるべきは、度を越えた量にならないようにする事。やはりどれも眼圧を上げてしまう原因になるため、注意喚起がされています。

お酒に限らず水分の大量摂取(1リットル程度の一気飲み)も眼圧を上昇させます。食事も肥満になる程食べてしまうと、血圧や血糖値上昇に比例するように眼圧が上昇します。

●カフェイン

これもちょっと特筆すべきところです。

カフェインはコーヒー・紅茶・緑茶など、何気なく普段飲むもにも含まれますが、もちろん飲んではいけない訳ではありません。ただ、海外における調査で眼圧の上昇に加担するという結果が出ています。

1日のカフェイン摂取量 200mg程度までを目安にする

という事です。特にコーヒーなどの嗜好品は完全に絶つのは厳しい場合もありますが、やはり「適度」ならOKなのです。

殆どの製品に含有量が記載されていると思いますので、ちょっと飲むときに確認をしてみる事です。

ただし、点眼のタイミングで飲むとより眼圧値が上昇しやすいとも報告されているので、点眼後5分~10分程度の時間をおいて飲む事は推奨されています。