弱視(じゃくし)って何?

弱視とは?


文字のとおり視力が弱いという意味ではありますが、一般的に言われる「学校視力に満たない」という認識とは異なります。医学的には視力の発達が障害されておきた低視力の事を言います。

子供の眼科健診

もっと具体的にわかりやすく言えば裸眼の視力ではなく、何らかの要因がありメガネやコンタクトレンズを使用しても生活必要上の矯正視力が出ない状態である事を指します。

例えば

A君)裸眼視力 0.1 → 矯正視力1.0 ※弱視ではない

B君)裸眼視力 0.1 → 矯正視力0.2 ※弱視判定の可能性あり

ともに裸眼視力は0.1ですが、A君はメガネやコンタクトレンズをすれば矯正視力が1.5まで出る。そのため弱視とは判定されません。

しかしB君はメガネやコンタクトレンズで矯正しても0.2までしか視力が出ません。こうなると、何らかの要因があり単純な近視や遠視ではないという判定となり、できる限りの治療を行っても結果が変わらなければ弱視という判定になり得ます。

弱視になる原因


では、弱視になってしまう「何らかの要因」とはどのようなものなのでしょうか。複数挙げられますが、ここでは代表的なものを挙げてみます。

(1)遠視・不同視などの屈折異常

特に遠視は近くにも遠くにもピントが合いにくい目の異常です。不同視は左右の目の見え方が全く違う(医学的には2ジオプター以上の度数さがある)異常です。

子供だと目を細めて見たりするような仕草や物事に飽きっぽく落ち着きがない様子が見られますので、日常生活を通してのサインを逃さないようにします。

乳幼児健診で発覚したら、目に合った眼鏡を使用したり目薬による治療を行います。

(2)斜視

片眼の目が、物を見る為に最も大事な部分「中心窩」で物を見ていないため視力が発達しない異常です。

肉眼で見たときにわからない程度の斜視もあります。その場合、片目は見えているので発見が遅れる事も多くあります。注意が必要です。

(3)形態覚遮断

耳慣れない言葉ですが、先天性の白内障、目の腫瘍、角膜混濁(にごり)、眼瞼下垂など、生まれつき大きな病気をもっていて目の成長期に与えられるべき刺激が遮断されてしまっている事を指します。

治療としてはこれらの病気に対する適切な手術等を行い、弱視になる要因を除去します。

ただし、家庭で安易にできる眼帯による片眼遮蔽もこの原因の1つにあたります。乳幼児への眼帯は、眼科医からの指示が出たときだけと限定しましょう。メヤニが出るから、腫れているからと安易に視力の発達時期に眼帯をしてしまうと大変な事態になりかねません。

小学生になる前までに


人間の目(眼球)は身長や体重とは異なり、大抵は6歳ごろまでには大人と同じ程度に成長します。

この時までに、上述したような弱視になる要因を取り除き正常な視力が発達していないと、一生ぼんやりとした世界で生活する事になりかねません。

乳幼児健診をしっかりと受け、快適な視力で小学校に入学させてあげたいものです。物が見えにくい状態だと、勉強をしていてもお友達と遊んでいても楽しくないですものね。

角膜血管新生に気づけますか?

角膜血管新生(かくまくけっかんしんせい)とは


読んで字のごとく、角膜(黒目)に新しい血管ができてしまう病気です。角膜が酸素不足の状態になっていると、角膜に酸素を運ぼうとして目の中で血管が作られてしまいます。

症状が悪化した際、最終的には失明にまで至るとても怖い目の病気です。

更に怖いのが、よほど酷くなるまで「自覚症状がない」ということです。痛くもかゆくもなければ眼科に行こうなんて思わないですよね。初期の段階において肉眼で確認するのは難しいです。

角膜血管新生↑の写真のように酷くなると白目の部分から、黒目の部分に向かってどんどん赤い血管が酸素や栄養素を運ぶために伸びているのがわかります。

原因が角膜の酸素不足にあるので、

コンタクトレンズを

うっかりつけたまま寝てしまう。

酸素透過性の低いレンズを毎日長時間に渡り使用している。

無理な使用方法で使ってしまっている。

という方に発症しやすい病気です。

角膜血管新生と診断されたら?


ともかく、すぐにコンタクトレンズの装着をやめる事。

これが何よりの治療です。

程度にもよりますが、黒目にできてしまった血管が元の状態に戻るには、早くて数ヶ月から大抵は年単位で時間がかかります。新生血管ができているのに、気にせずコンタクトレンズを使っているとやがては視力低下が始まり最終的には放置した場合は失明にまで達します。

それから角膜血管新生を作ってしまう人にアルアルなのですが、

「メガネを持っていない」

と申し出られる事がよくあります。

メガネは顔の印象が変わるから嫌とか、仕事上どうしてもメガネでは無理だとか様々な理由はあると思います。

しかし、

「失明」VS「メガネを掛ける」

どちらを選択されますか?

答えは1つではないでしょうか。

コンタクトレンズをやめる事によって角膜に酸素が補給されることで、血管が徐々に消えて症状が改善されていきます。

確かに近年は酸素透過性の高いコンタクトレンズが出てきていますが、メガネに優るものではありません。初期の段階であればコンタクトレンズの使用は必要最低限にとどめる等で改善されるケースもあります。眼科医からの指示を仰ぎましょう。

酸素透過性が高いものでも使い方次第


近年は酸素透過性の高いコンタクトレンズが登場はしてきていますが、

★使用期限を超過して使っている

★汚れがついたまま

★レンズが変形している

★カラコンが希望

等の理由で、酸素透過性を低下させてしまっている事もあります。これらの点においてはやはりどんなに良い素材、製品であっても使うユーザー次第というところです。

角膜血管新生になっているかどうかは、眼科で医師に診てもらえばすぐにわかります。

定期的な検診を受ける事の大切さがここにも存在しています。

暗いところで見えにくいのは病気?

夜盲症(やもうしょう)って何?


暗いところで見えにくい。

このような症状は誰でも経験はあると思われます。

一般的には、

「暗いところではそんなもんでしょ。」

「老眼が始まったかな。」

なんて事で片づけられることも多いですが、もちろんそうではない場合もあります。

暗い部屋

人間の目の機能で、

まぶしさに目が慣れる事を「明順応(めいじゅんのう)」

暗さに目が慣れる事を「暗順応(あんじゅんのう)」

といいます。

 

具体的には、夜に暗い部屋の電気をつけると一瞬眩しく感じますが直ぐに目が慣れます。これは明順応です。

反対に、明るい部屋の電気を消すと真っ暗で何も見えなくなりますが、時間が経つと目が暗さに慣れてきます。これが暗順応です。

明順応より暗順応には時間がかかります。

ただ、時間がたっても暗さに慣れてこない。

すなわち暗順応の機能がうまく働かない病気があります。

 

これを夜盲症(やもうしょう)と言います。

暗順応のしくみ


光は角膜(目の入り口)から入り、網膜(光を感知するスクリーン)に到達します。

この網膜には光を感知する

「錐体(すいたい)細胞」

「杆体(かんたい)細胞」

2つの細胞があります。

錐体細胞は主に明るいところでの働きが顕著で、色を認識したりするのもこの細胞の役目です。暗いところでは動きが低下します。

対して杆体細胞は色の認識はできませんが、わずかな光でも感知する機能に長けるため暗いところで動きます。

夜盲症だと杆体細胞がうまく機能しないので、

暗いところで見えにくいという症状が起こります。

進行する夜盲症


暗い所で見えにくい。

これが夜盲症の代表的な症状です。

ところが、錐体細胞は正常に機能しているため明るいところでの見え方は至って普通という事もあります。

そのため、何か異常があると本人が自ら気が付くのはなかなか難しいものでもあります。

夜盲症には

先天性(生まれつき)と後天性(栄養不足や炎症などが原因)があります。

 

とくに先天性の場合は生まれつき杆体細胞が働かない。

生まれた時からずっと、暗いところは見えにく状態。この見え方が普通だと思って生きてきている訳です。

ましてや子供が「見え方が変だよ」

と、自分で上手に説明する事は難しいでしょう。

 

夜盲症なのかな?

 

と気づくきっかけは

暗い部屋で物によくぶつかったり、つまづく。

たまたま友達や家族との見え方の差が話題にあがった。

 

このような時が多いようです。

先天性の場合、夜盲症の症状が

「進行するタイプ」と「進行しないタイプ」に分けられます。

進行するタイプの夜盲症のうち代表的なのは、難病に指定されている網膜色素変性が原因となるケースです。

網膜色素変性は大人になる頃までには症状が発症し、数十年かけて進行していきます。

夜盲症以外にも

視野狭窄

視力低下

といった症状が見受けられます。

進行性の夜盲症としては、ほかにも脳や網膜の疾患があります。

進行しないタイプであれば

視野や視力は正常であることが多く、暗い所以外では普通の生活が送れます。

いずれも遺伝が大きく関係していると言われています。

後天性夜盲症の場合


後天性の場合、夜盲症の症状が突然現れます。

後天性夜盲症の原因として真っ先に挙げられるのは、

 

ビタミンA欠乏症。

 

他にも「網脈絡膜炎」「眼球鉄錆症」などが原因とされています。

夜盲症の診断


自覚症状だけを元に診断する事はできませんので、眼科では主に次のような検査を行い夜盲症かどうかを他覚的に診ていきます。

●眼底検査

医師が肉眼で目の奥にある血管や網膜、視神経などの状態を確認します。

網膜色素変性は、網膜に色素のむらや沈着が見られるのが特徴です。ただし、初期の場合や軽症例では色素沈着がみられない場合もあります。

●視野検査

見え方の範囲を調べる検査です。網膜色素変性や後天性夜盲症の場合は、視野が狭くなっていることがあります。

●光干渉断層計(OCT)

医師が肉眼で正面から眼底を観察するのに対し、横から網膜の断面を調べる検査です。網膜色素変性では、網膜の一部が消失している事が発見される事もあります。

●眼底自発蛍光(FAF)

網膜にあるリポフスチンという物質が蛍光を発する性質を利用して眼底を調べる検査です。網膜色素変性では、病気の進行につれて網膜から発せられる蛍光の強さが変化します。

 

夜盲症の治療はあるの?


医学が発達してきたとは言われていますが、残念ながらまだ先天性夜盲症に対する治療法は見つかっていません。

網膜に光が当たると進行すると考えられていますので、まぶしさの原因になる主に短波を遮光メガネで軽減する等、光の刺激から網膜を守るような予防を行うことで症状を緩和します。

後天性夜盲症の場合は原因となっている病気の治療をします。

ビタミンA欠乏症なら、ビタミンAを摂取する等です。

 

もちろん暗い場所に限ったことではありませんが、見えにくさを感じたら、できるだけ早く眼科を受診するようにしましょう。

緑内障になったらどんな生活になるの?

緑内障と診断されたら、今後の生活はどう変わるの?


「緑内障です」と医師から告げられたとき、個人差はありますが大変な病気にかかってしまったと感じた方が多いのではないでしょうか。

緑内障は、放置してしまえば失明にまで至る怖い病気です。

残念な事ではありますが、現実から目を背けずに向かい合う事が先ずは大切です。むしろ、早期に見つかったのであれば、今見つかったのが不幸中の幸いだとポジティブに考えてみると、少し心が軽くなるはずです。前向きに病気と向かい合って生活する事が大事です。

緑内障と診断されたからと言って「即入院」「即手術」という訳でもありません。急性的な発作や症状がない限り、基本的にはほとんどの方はいままで通りの生活が可能です。

しかし、いくつか気をつけなければならない事があります。多少の制限が必要となる事はご留意いただきたい点です。

緑内障診断後に注意しなければならない事


普通に歩いたり、ごはんを食べたり、遊んだりとほとんどの日常生活は送れますが、いくつか気を付けなければならない事があります。

●緑内障目薬の点眼を忘れない事
●うつ伏せや逆立ちの状態にならない事

最も注意しなければならないのは「眼圧値」です処方される緑内障用の目薬は眼圧をコントロールするためのものです。眼科医の指示通りずっと点眼を継続する事になります。(生きている間はずっと)

眼圧値を上昇させてしまう原因になる「うつ伏せ」「逆立ち」の状態もかなり注意が必要です。

寝るときはなるべく仰向けで寝ます。しかし、寝返りをうったりするのはなかなか防ぎようがありません。リクライニングベッド30°程度の傾斜が眼圧が上がりにくいベスト角度と言われますが、30°のままは一晩寝るのも姿勢としてはあまり現実的ではありません。どうしてもうつ伏せになってしまう場合は、抱き枕などでせめて横向きになることで対処します。

また、エステや整体での施術はうつ伏せの状態は避けるようにします。逆立ちはあえてトレーニングでもしなければですが、うっかり遊園地のジェットコースターで一回転とかは気を付ける必要があります。

眼圧値を上げてしまう原因になりやすい事をもういくつか挙げてみます。

●目を強く押す(かゆい時などにこする)
●ネクタイ、ハイネック等の首をきつく締める服装
●重たい物を持ち上げる(力むような行為)
●長時間のスマホや読書など、頭を下げている事
●激しすぎる運動やトレーニング
●万病の元、たばこ

などがあります。

これは大丈夫かな?という事は、なるべく主治医に相談してから行うようにします。

食べてはいけないものはあるか?


結論から言えば、適度ならほとんどのものは問題はないのです。よく指摘されるものでいえば、

●お酒
●脂っこいもの
●甘いもの
●塩分の多すぎるもの
●その他カロリーの高いもの

すべてにおいて気を付けるべきは、度を越えた量にならないようにする事。やはりどれも眼圧を上げてしまう原因になるため、注意喚起がされています。

お酒に限らず水分の大量摂取(1リットル程度の一気飲み)も眼圧を上昇させます。食事も肥満になる程食べてしまうと、血圧や血糖値上昇に比例するように眼圧が上昇します。

●カフェイン

これもちょっと特筆すべきところです。

カフェインはコーヒー・紅茶・緑茶など、何気なく普段飲むもにも含まれますが、もちろん飲んではいけない訳ではありません。ただ、海外における調査で眼圧の上昇に加担するという結果が出ています。

1日のカフェイン摂取量 200mg程度までを目安にする

という事です。特にコーヒーなどの嗜好品は完全に絶つのは厳しい場合もありますが、やはり「適度」ならOKなのです。

殆どの製品に含有量が記載されていると思いますので、ちょっと飲むときに確認をしてみる事です。

ただし、点眼のタイミングで飲むとより眼圧値が上昇しやすいとも報告されているので、点眼後5分~10分程度の時間をおいて飲む事は推奨されています。

頻繁に聞くようになった「スマホ内斜視」って何?

そもそも内斜視とは?


内斜視とは下の図のように片目が内側に寄ってしまっている状態の事を言います。

正面からお顔を見たときに片側が内側に寄っているのがわかるので、比較的発見しやすい目の病気です。しかし、内斜視の程度が軽度の場合は見た目だけではわからずに本人だけが見え方がおかしいと思っている事も多くあります。

左右の目線が違うので、見え方の異常としては「2つにダブって見える(複視)」という症状が現れます。

内斜視には先天性と後天性があり、ここでのテーマ「スマホ内斜視」は後天性ものです。眼科的に言えば「急性内斜視」で、字のとおり急に片眼が寄り目になり戻らなくなってしまう病気です。近年はパソコンやタブレット、スマートフォン(スマホ)に至ってはほぼ1人1台を持つ時代となり、小学生くらいの子供でも使用する事が日常化しています。そのため、画面を見るために寄り目をしている時間が非常に長く、元に戻らなくなってしまうのです。

時代とともに、スマホ画面を見続ける人が増えた事に起因し急性内斜視の症状を訴える人が増えた為「スマホ内斜視」と呼ばれるようになりました。

スマホ内斜視の症状


スマホ内斜視では次のような症状や行動がよく見受けられます。

■物がダブって見える

例えば、信号機や看板の文字がダブる、映画やテレビの字幕が見えない、残像があるという訴えが多いです。

スマホ程度の距離を見ているときは問題ないのに遠くに視点を向けると症状が悪化するケースが多いです。また、両目で見るより片目で見た方が複視がなくなり見やすい状態となります。

程度が軽い場合はダブっているような判別がつかず、「ぼやけて見える」「ピントが合いにくい」と感じられる方もいます。

■瞬きの回数が非常に多くなる

特に子供の場合は内斜視の症状が「見えにくい」と訴える事が出来ないため、ピントが合わず調整しようとして瞬きの回数が多くなります。

■歩きづらい

大人であれば、片目をつぶりながら歩いて眼科を受診するなんてこともあります。子供の場合はやはりうまく訴える事ができないので、ふらふらしてしまいます。

■顔を斜めにする

斜視でない方の目で見るほうが視界がすっきりするため、顔を斜めにしてしまいます。特に子供の場合は自然に顔を斜めにしながら見ていて、正面にするよう注意しても、楽なのですぐに顔を斜めに戻してしまいます。

■物が立体的に見えない

物が立体的に捉えられなくなります。立体感、距離感を含め見え方の質が落ちます。子供であれば球技や平均台などが苦手になります。3D映画も楽しむ事はできません。

見え方の異常は非常にストレスとなります。日常生活を送る事も困難になる事がもしばしばあります。

スマホ内斜視になってしまったら?


では、スマホ内斜視になってしまった場合はどうしたら良いのでしょうか。

人間の目の構造上寄り目をする力(輻輳)は比較的あるのですが、耳側に向ける力(開散)はかなり弱いのです。そのため、内斜視を自分の力で何とかするのはなかなか難しいものなのです。

先ずはできる事から行ってみます。

1)よく栄養と睡眠をとり、スマホなど近距離でものを見る事をやめる(時間を大幅に短縮する)

2)複視が恒常化している場合、斜視の程度が軽度~中程度の場合は斜視用のメガネを掛ければ矯正ができます。うまく併用して、日常生活を送ります。

3)メガネでも矯正ができず、複視が残ってしまう場合には最終的には手術を行います。(ボトックス注射を提案される事もありますが、年齢的な制限や効果が切れるので度々処置を行わねばなりません)

急性発症した内斜視は、徐々に慢性化し恒常性斜視となることがしばしばあります。

スマホ内斜視にならないようにするには?


スマホ内斜視になる第一の原因は「画面の見過ぎ」です。つまり、スマホなどの電子機器を見ない。これが一番の予防です。

しかし、現代の生活でスマホやパソコンの画面を見ないというのは大変難しいものです。そのため、重要な事はこまめな休憩をとる事です。

具体的に言えば20~30分程度に1回、窓の外「遠く」を見る事です。

これにより寄り目が元に戻らないという状態を回避するのです。

※余談ですが「緑は目に良い」という言葉を耳にすると思います。昔は外を見れば山や木々がありました。これが転じて緑を見なさいになったと言われています。この言葉の本当の意味は、遠くを見る事が目にとって良い事であり、緑色の物を見る事ではありません。

それから、寝そべりながらスマホを見る事も負荷がかかりますし、さらに横向きの状態で画面を見ると左右の目の位置から画面までの距離が違うため負荷のかかり方に差が出るので大変危険です。寝そべりスマホはともかくやめましょう。

老眼対策は早めが良い

老眼は誰にでも起こる


老眼、一般的には手元にピントが合いにくく見えない(見えにくい)状態の事をいいます。

具体的には

●新聞や本が読みにくい
●スマホが読みにくい
●裁縫の針が通しにくい
●レストランのメニューが読みにくい

など、30センチ~50センチ程度の距離に不便を感じて気が付く事が多いです。

年齢とともにピントを合わせる目の機能が低下するために起こります。足腰の筋肉が衰えたり白髪がでてきたりするのと同じで、人間の老化現象を止める事はいまのところできません。

ただ、症状の出方には個人差があります。例えば45歳ごろに老眼の症状が気になる方もいれば50歳ごろでも気にならないという方もいます。これにはその方の元々の目の度数も大きく影響していて、たまたまピントが手元に合っている軽度の近視の方だと症状が出ている事に気が付きにくいという事もあります。

老眼を我慢するメリットは無し


老眼の症状に気が付いた時、あなたならどうなさいますか?

★まだまだ頑張れる!!!

★老眼鏡は恥ずかしいから嫌!!

★どうしても見えなくなったら考える!!

とか、無理して頑張ろうとしていませんか。これって何のために頑張るのでしょうか。老眼の症状を無理して耐えても、目にとって良い事は断言しますが「ありません」。老眼は気が付いた時に対処していくほうが見え方のストレス改善にもつながりますし、いざ症状が酷くなったときに遠近両用メガネ等に慣れやすいのです。

仮に初期の老眼症状を乗り切ってきたとしましょう。もうこれ以上は耐えられず必要な度数を入れて遠近両用メガネを作ろうとしても、遠近両用のメガネの見え方になかなか慣れることができず大変な苦労をなさっている患者様も実は少なくありません。目線の使い方や視線を変えたときのちょっとした歪みなど、老眼の程度が弱いときから慣れていると少し度数を調整する事によってカバーできるのですが、初めてなのに強い度を入れる必要があると”見えるけれども掛けていられないメガネ”になってしまいます。

老眼への対策は早めに行う事が大切です。

経験者であれば遠近両用コンタクトもある


日頃より使い捨てコンタクトやハードコンタクトを使っている方であれば、遠近両用コンタクトという選択肢もあります。

ソフトタイプであれば同時視型のデザインとなっていますので、今のレンズと比べて遠近どちらか不便を感じている方が改善される可能性は高いと言えます。

ハードタイプであれば、ほとんどのものが交代視型のデザインでつくられていて眼球に対するレンズのフィット位置により見え方が変わります。うまく視線を動かすことができると快適な視界を得られます。

今までコンタクトレンズを使った事がない場合、度数等にもよりますがいきなり遠近両用コンタクトを試したとしてもあまり満足感が得られないケースが多いです。例えば、遠方視力は良好で手元だけ見えにくいという方だと「遠近両用コンタクトをつけないほうが遠方が見やすい」事が多いのです。また、老眼で手元が見えにくくなっているのに取り扱いにおけるコンタクトの表裏を確認する作業を諦めてしまう、など見え方とは異なるところでのストレスが発生してしまう事もあります(この場合はうまくメガネを活用するほうが良いです)

もちろん初めて使うすべての方がこのようになる訳ではありませんから、初めてでも試してみる価値があるのは確かです。

老眼鏡をうまく使い分けて快適に


遠近両用のメガネにどうしても慣れない、という方も多くいらっしゃいます。

こういった場合は、「遠くを見る用のメガネ」「近くを見る用のメガネ」をうまく使い分ける事で、見たい視点にサッとピントを合わせることができます。

常に持ち運び、荷物がかさばったりするのは少し手間かもしれませんが快適な視界を得られるのであれば、必要最低限の備えと考えてみてはいかがでしょうか。

白内障の手術後に気になる事

先日、ついにA子の家族が白内障手術をしました。今まで真っ白で霞がかかったような視界が見違えるほど綺麗に見えるようになったと驚いています。しかも日帰り手術という事もあり手術そのものは20分程度で終了、術後ケアの説明を受けて帰宅というスピードでした。

ただ、術後においてしばらくの間は少し気になる点があるようです。


1つ目は「見え方が不安定だった」という事。

選択した眼内レンズの種類等や経過にもよりますが、ピタッと綺麗な視界になる時とぼやけて焦点が合いにくいときがあります。

これは時間とともに眼内レンズが安定すれば解消となります。個人差はありますが、2週間程度が目安のようです。

見え方という点では、輪っかのようなものが見えたり、まぶしく乱反射のように見えたりするハロー・グレア(光視症)の症状が気になる事もありますが、これらも次第に落ち着く事がほとんどです。

A子の家族は遠中近の多焦点レンズを入れましたが、術後の3日間程度は右がみえにくとか、左が見えにくいとか。いちいち気になってしまっていたようですが、1週間程度で症状はほぼ改善されています。

ただ、単焦点眼内レンズを選んだ場合は老眼鏡が術後に必要になるケースもあります。完全に安定する3ケ月程度、様子をみてから作成するほうが無難です。


2つ目は「飛蚊症が酷くなった」と感じる事

白内障の手術後は対象物が綺麗にはっきりと見えるようになります。そのため、手術前も同じ状態であったにも関わらず、霞んでいた視界のため気が付いていなかっただけという事がほとんどです。

一般的に白内障手術を受ける年齢であれば、他の疾患が何かしらあったりするもので、生理的な飛蚊症もその中の一つです。

同じような例では、全く変わってないのに
「あら?こんなところにシミができちゃっている」と気が付いたり、
手術前時の写真を見て「お化粧、こんなに濃く塗っていたかしら?」といった具合です。


3つ目は「白内障しか治っていない」という事

白内障の手術をしたからといって、ついでに他の病気が治る訳ではありません。例えば、白内障の手術をしても緑内障はそのままです。白内障の手術をして治せるのは”白内障だけ”なのです。

例えば他に緑内障を患っていたとして、白内障手術後に欠けてしまった視野が元通りになる事はありません。


”手術”という大きな事が行われるので、少なからず今までよりはよく見えるようになる事は確かです。

「春に満開に咲くさくらの色ってこんなに綺麗だったんだな」「雨上がりの綺麗な虹のかかる風景」に感動したりと素晴らしい事を再認識する事も多々あります。

目と脳は繋がっています。目から入った情報を脳へ多く送る事は認知症の予防効果にもなります。

歳を重ねて体力が低下してから手術を受けるより、早めの段階で白内障の手術を決断するほうが最近ではメリットのほうが多いといえそうです。

(※当院で手術は行っていません。術前・術後のフォローのみとなります。紹介状をご希望の方は医師までご相談ください)

花粉の飛散時期に大活躍するコンタクト

抗アレルギー薬配合のレンズ


花粉やハウスダスト等によるアレルギーには本当に長く頭を抱えますね。目薬を点眼したり、かゆみによる涙目をこらえつつ生活をしなければなりません。特に今年は飛散量も多く、大変な目にあったという患者様のお話をよく伺います。

このような時は普通であれば眼鏡を掛けて過ごしますが、強度近視の方だと眼鏡が分厚くなって見え方の質が落ちたり、コンタクトの時にはない煩わしさが残ると思います。

しかし、ジョンソン&ジョンソン社よりこのような時に役立つ製品が「世界初」として販売開始となっています。

ワンデー アキュビュー® セラビジョン® アレルケア®


では、世界初となった商品とはどのようなものなのでしょうか。

商品名は「ワンデー アキュビュー® セラビジョン® アレルケア®」といいます。ケトチフェンという”抗アレルギー薬”を配合したコンタクトレンズなのです。

ワンデー アキュビュー® セラビジョン® アレルケア®

このケトチフェンには3つの働きがあります。

●アレルギー症状を起こす物質を封じ込める

●目のかゆみ等を引き起こすヒスタミンをブロックし、症状を和らげる

●アレルギー症状の悪化や持続のもととなる炎症を起こりにくくする、悪化させない

また、装着後しばらくするとケトチフェンがレンズから6時間をかけて出てくるという画期的な仕組みになっています。

アレルケア仕組み

ずっと目薬に浸っているような感じで過ごせるなら、かゆみの症状等もかなり緩和してもらえそうですよね。

ワンデー アキュビュー® セラビジョン® アレルケア®を試すには


では、花粉症等のアレルギーがあるという方は、どのように使用を開始したらよいのでしょうか。

当院ではテストレンズを導入しています。眼科医の診断に従い使用を開始する必要がありますので、まずは先生の診察を受けます。

アレルギー症状の診断を踏まえ、使用対象者には実際にテストレンズを装着してもらいお渡しする流れとなります。

但し、アレルギーの症状の程度や度数等によってはお渡しができない場合もありますので、個別の症状については診察時に眼科医へご相談下さい。

花粉の飛散時期前が効果的


花粉症対策であれば症状が悪化してからワンデー アキュビュー® セラビジョン® アレルケア®の装着を考えるよりは、花粉が飛散する前から始めるほうが効果的でです。

3月頃まではスギ、そのあと5月頃まではヒノキ花粉のピークです。スギ花粉症である方はヒノキ花粉にも大抵の場合発症しますから要注意です。6月頃はイネ、8月~9月頃はブタクサなど本当に年中花粉は飛散しています。

アレルギー症状緩和を目的として対策をするなら、大変役立つ製品になったのではないでしょうか。

アイフレイルってご存じですか?

アイルフレイルとは?


「最近、年齢のせいかしら?目がかすむわ」

「目が疲れているのかしら。ピントがなかなか合わないわ。老眼かしら?」

「まっすぐの線がちょっと歪んでいるように見える。歳だからね」

など、何かしら起きている目の異変を年齢のせいにしていることってありませんか。40歳を過ぎたくらいから、気になってくる見え方のひとつや二つあるだろうというのは自然な考え方です。

だんだんと変化していくため、何となく最近・・というように「大きな変化」とは感じてない方もほとんどです。

見えにくいメガネ

まとめると、「加齢によって目の機能が低下していること」をアイフレイルと呼んでいます。

アイフレイルが起こる原因


第一の原因はやはり加齢です。誰でも年をとりますからアイフレイルを止めることはできません。

しかし、アイフレイルは単に年齢だけの問題ではありません。「糖尿病」「高血圧」「喫煙」「ストレス」などがアイフレイルを加速させる要素となっています。

自分のアイフレイルはどの程度?


日本眼科啓発会議内の公式サイトで、自身に起きているアイフレイルがどの程度であるのか。自己チェックすることができます。40歳以上は是非試してみてください。

アイフレイルチェックリストへ

いかがでしたか。
何か「気になる」という時点で治療を開始するほうが絶対に良いです。酷い状態になってからだと、大きな手術をしなくてはならないとか治療にかかる患者様自身への負担も大きなものになってしまいます。早期発見と治療の開始がより良いと考えられます。

アイフレイルの対策としては何がある?


目の機能が老化により低下していると、次のような症状がでてきます。

■物が見えにくい(視力低下・老眼) → 眼鏡等で視界を確保する

■目が乾く(ドライアイ)→ 生活習慣の改善やドライアイ点眼薬の併用

■視野が欠ける(緑内障) → 急激な進行とならないよう医師との治療計画をたて点眼治療等

■歪んで見える( 加齢黄斑変性)→ 基本的生活習慣改善や場合によってはレーザー等の治療

■白く曇って見える、まぶしい( 白内障)→ 白内障の進行を緩める点眼治療や手術の検討

など、眼科主治医と相談すれば対処できる事はたくさんあります。「歳のせいだから」という理由で放置をしないようにする事が大切です。

物が歪んで見える?!働き盛りの年代は要注意!

見え方に異変が?!様子を見る事を選択しますか?


平日は仕事をバリバリと片付けて、土日は家族サービスにいそしみながら忙しい毎日を送るのが30~40代男性の日常かと思います。

そんな時にふと、「見え方がちょっと変だな?」と気が付くことがあったらどうしますか。痛みや充血などもありません。すぐに眼科受診をするでしょうか。自覚症状があまりないと、今やらなくてはならない事を優先してしまい自分の事が後回しになる事はありませんか。

何となく見え方の違和感に気が付きつつも、疲れのせいにして早めに就寝。しかし翌朝も「あれ?物が歪んで見える?おかしいな」と軽快されていない事に気が付きます。それでもやはり仕事は急に休めず、もう片方の眼が見えているので大きな生活上の不便を感じられず後回しなってしまうことはないでしょうか。

そして、いよいよ見え方がおかしいと思って眼科を受診する方が非常に多く見受けられるというのが現状です。

この歪みの正体は?


やはり、数日程度経過して症状が改善しないと心配になります。

◆物が歪んで見える

◆暗い感じに見える

◆色味が違うように見える

など、どんどん見え方の違和感が大きくなり眼科を受診するとようやくその理由がわかります。

この病気は中心性網膜症(中心性漿液性脈絡網膜症:ちゅうしんせいしょうえきせいみゃくらくもうまくしょう)と呼ばれています。特に発症しやすいのが男性、女性の3倍程度の発症率があるとされています。年齢的にも丁度忙しい毎日を送る30代~40代に多いのも特徴です。

眼球奥の黄斑部、物をみるために一番大事なところに水(漿液)が溜まり、一部に網膜剥離が起きた状態になります。そのため、部分的な歪みなどの見え方の異常をきたします。

眼球の断面図を見てみると明らかに、盛り上がりが確認できます。上の写真が正常です。滑らかな状態です。下の写真が中心性網膜症の状態で、赤いマル印のあたりに盛り上がりが確認できます。これが歪むように見える症状の原因なのです。

正常な眼底写真OCT
中心性網膜炎OCT断面図症例

中心性網膜症の原因


では、何が原因でこのような病気が起きるのでしょうか?残念ながら現在の医療では、直接的な原因が医学的に解明されてません。発症した方の年代や生活スタイル等から推測されるには「ストレス」「過労」「睡眠不足」などが原因の1つになっているのではないかとされています。

中心性網膜症の治療方法


直接的な原因が不明なので、一因と推測されるストレスや疲れを癒すことで緩和につながり、大抵は3ケ月~6ケ月程度で自然に治っている事が報告されています。そのため、十分な睡眠とリラックスを心掛けた生活を送る事で経過観察する事になります。

このように通常はゆったりとした生活を送る事で元の状態に戻るようになりますが、自己判断にたよらず眼科医の診断を仰ぐようにしましょう。