視神経乳頭について
人間ドックの結果をみると、表題のような所見が書かれているのを見た事はありませんか?聞きなれない言葉ですが、目の奥(眼底)には視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)なるものが存在します。まずはこの視神経乳頭について説明していきます。
かねてより眼球はカメラのつくりによく似ていると言われます。眼球の内側にはカメラのフィルムに相当する「網膜」と呼ばれる組織があり、瞳孔から眼の中に入った光はこの網膜上に像を結びます。網膜には視細胞という光に反応する細胞が1億個以上も存在していて、ここで感知された情報は視神経というケーブルを通って脳へ伝えられます。(人間の立場からみると、何が見えたかがわかることになります。)
視細胞と脳を結んでいるケーブル「視神経」は100万本を超える程存在するといわれています。その1本1本は目の奥へ向かって伸びていて、やがて1つの太い束となるように集まっています。そして1本になった視神経の束が脳へと向かうために、眼球の壁(強膜)を突き抜けるこの一点のことを「視神経乳頭」と呼んでいます。
視神経乳頭陥凹拡大とは
視神経乳頭の中央部分はほとんどの人がもともと少し凹んでいます。生まれつき凹みが大きい方も小さい方もいます。この凹みのことを「視神経乳頭の陥凹(かんおう)」と呼んでいます。
↑上の写真は正常と判定された視神経乳頭、
↓下の写真は視神経乳頭陥凹拡大と判定されたものです。
真ん中部分あたりの凹みが明らかに下の写真の方が大きいのが確認できます。
視神経乳頭の陥凹はどんな人にもありますが、この凹みが標準的な大きさから考えて異常に大きい場合、陥凹拡大と診断を受けます。
視神経乳頭陥凹拡大と診断された後はどうしたら良い?
まず、この凹みが標準より大きいと判定されるとこの診断がくだります。これが病的な凹みであるのか、生まれつきのもので正常の範囲内として考えて良い凹みであるのかは眼科における精査が必要となります。生まれつきの場合は経過観察とされることがほとんどです。
では、病的な異常の場合はどうでしょうか。視神経細胞が減るとこの凹みが大きくなります。これが原因で視神経乳頭陥凹拡大が起きている場合は、まず緑内障が疑われ罹患していないかを精査していくことになります。
緑内障とは視神経細胞が次第に減少し、失明にまで至る病気です。減少した視神経細胞は再生される事がないため、失ってしまうと二度と元の状態に戻す事はできません。さらに、初期の段階で見え方における自覚症状だけで気が付く人はほとんどいません。人間の目は2つあるため、仮に片眼に異常が起きていても、もう片方の眼が見え方を補ってしまう為、なかなか異常が起きている事に気が付くことができないのです。
聞きなれない視神経乳頭陥凹拡大、放置してしまうと目が見えなくなってしまうこともあるという事を念頭に、定期的に眼科での経過診断を受けるよう心掛けることが大切になるのです。