そもそも内斜視とは?
内斜視とは下の図のように片目が内側に寄ってしまっている状態の事を言います。
正面からお顔を見たときに片側が内側に寄っているのがわかるので、比較的発見しやすい目の病気です。しかし、内斜視の程度が軽度の場合は見た目だけではわからずに本人だけが見え方がおかしいと思っている事も多くあります。
左右の目線が違うので、見え方の異常としては「2つにダブって見える(複視)」という症状が現れます。
内斜視には先天性と後天性があり、ここでのテーマ「スマホ内斜視」は後天性ものです。眼科的に言えば「急性内斜視」で、字のとおり急に片眼が寄り目になり戻らなくなってしまう病気です。近年はパソコンやタブレット、スマートフォン(スマホ)に至ってはほぼ1人1台を持つ時代となり、小学生くらいの子供でも使用する事が日常化しています。そのため、画面を見るために寄り目をしている時間が非常に長く、元に戻らなくなってしまうのです。
時代とともに、スマホ画面を見続ける人が増えた事に起因し急性内斜視の症状を訴える人が増えた為「スマホ内斜視」と呼ばれるようになりました。
スマホ内斜視の症状
スマホ内斜視では次のような症状や行動がよく見受けられます。
■物がダブって見える
例えば、信号機や看板の文字がダブる、映画やテレビの字幕が見えない、残像があるという訴えが多いです。
スマホ程度の距離を見ているときは問題ないのに遠くに視点を向けると症状が悪化するケースが多いです。また、両目で見るより片目で見た方が複視がなくなり見やすい状態となります。
程度が軽い場合はダブっているような判別がつかず、「ぼやけて見える」「ピントが合いにくい」と感じられる方もいます。
■瞬きの回数が非常に多くなる
特に子供の場合は内斜視の症状が「見えにくい」と訴える事が出来ないため、ピントが合わず調整しようとして瞬きの回数が多くなります。
■歩きづらい
大人であれば、片目をつぶりながら歩いて眼科を受診するなんてこともあります。子供の場合はやはりうまく訴える事ができないので、ふらふらしてしまいます。
■顔を斜めにする
斜視でない方の目で見るほうが視界がすっきりするため、顔を斜めにしてしまいます。特に子供の場合は自然に顔を斜めにしながら見ていて、正面にするよう注意しても、楽なのですぐに顔を斜めに戻してしまいます。
■物が立体的に見えない
物が立体的に捉えられなくなります。立体感、距離感を含め見え方の質が落ちます。子供であれば球技や平均台などが苦手になります。3D映画も楽しむ事はできません。
見え方の異常は非常にストレスとなります。日常生活を送る事も困難になる事がもしばしばあります。
スマホ内斜視になってしまったら?
では、スマホ内斜視になってしまった場合はどうしたら良いのでしょうか。
人間の目の構造上寄り目をする力(輻輳)は比較的あるのですが、耳側に向ける力(開散)はかなり弱いのです。そのため、内斜視を自分の力で何とかするのはなかなか難しいものなのです。
先ずはできる事から行ってみます。
1)よく栄養と睡眠をとり、スマホなど近距離でものを見る事をやめる(時間を大幅に短縮する)
2)複視が恒常化している場合、斜視の程度が軽度~中程度の場合は斜視用のメガネを掛ければ矯正ができます。うまく併用して、日常生活を送ります。
3)メガネでも矯正ができず、複視が残ってしまう場合には最終的には手術を行います。(ボトックス注射を提案される事もありますが、年齢的な制限や効果が切れるので度々処置を行わねばなりません)
急性発症した内斜視は、徐々に慢性化し恒常性斜視となることがしばしばあります。
スマホ内斜視にならないようにするには?
スマホ内斜視になる第一の原因は「画面の見過ぎ」です。つまり、スマホなどの電子機器を見ない。これが一番の予防です。
しかし、現代の生活でスマホやパソコンの画面を見ないというのは大変難しいものです。そのため、重要な事はこまめな休憩をとる事です。
具体的に言えば20~30分程度に1回、窓の外「遠く」を見る事です。
これにより寄り目が元に戻らないという状態を回避するのです。
※余談ですが「緑は目に良い」という言葉を耳にすると思います。昔は外を見れば山や木々がありました。これが転じて緑を見なさいになったと言われています。この言葉の本当の意味は、遠くを見る事が目にとって良い事であり、緑色の物を見る事ではありません。
それから、寝そべりながらスマホを見る事も負荷がかかりますし、さらに横向きの状態で画面を見ると左右の目の位置から画面までの距離が違うため負荷のかかり方に差が出るので大変危険です。寝そべりスマホはともかくやめましょう。